まちむら交流きこうで20年以上継続的に開催されている、グリーン・ツーリズムインストラクター育成スクール。今回はそのスクール開催地の新フィールド調査として、埼玉県熊谷市を訪れました。
日本一暑いまちとして有名な熊谷ですが、グリーン・ツーリズム的な視点で見ても、とても面白い素材がありましたのでここでご紹介します。
埼玉県の中央部に広がる比企丘陵(熊谷市、東松山市、滑川町、嵐山町、吉見町、寄居町)は、約300ものため池を擁する里山エリアで、今なお「ため池」を活用した農業が営まれています。そしてため池の数や密度に関しては、日本有数のエリアとなります。
ため池が多い理由としては、近隣に大きな川がなく、地下水も乏しいので、谷の奥に堤を作って雨水や湧水をためて水田に活用するためです。
谷間のため池を利用する田んぼを「谷津田」と呼び、「ため池農法」を中心に独特の景観と文化を作っています。
この地域で今チャレンジしているのが、日本農業遺産と世界農業遺産の認定です。2018年に近隣の自治体やJAグループで「比企丘陵農業遺産推進協議会」を設立して、「ため池農法」の継承・アピールや6次産業化などの活動をしています。
小麦生産量で埼玉トップクラスを誇る熊谷市。
あまり知られていませんが、実は小麦の生産が盛んな地。
その理由としては小麦の生産量をあげるため、「麦踏み」と米と小麦の「二毛作」を全国に広げた熊谷出身の権田愛三(1850~1928)の存在があげられます。
権田愛三は、明治から大正期にかけて麦の増産研究に取り組み、「実験麦作改良書」を著し、全国の麦の生産を増産させ、食糧難から救ったという事で「麦王(麦翁)」とたたえられました。
そのようなことから、今でも熊谷では、二毛作が盛んに行われ、県内でもトップクラスの小麦の生産量を誇っています。
麦の生産が始まるのは、稲の収穫が終わった11月ごろ。
写真は2月下旬の状態。まだまだ小さいですが、春が近づき温かくなると「ぐんっ」と生長します。
そして収穫が6月ごろ。初夏になると緑色だった穂も黄金色になります。
ちなみにこの季節を「麦秋」と言います。日本一暑いまちで、夏のイメージの強い熊谷ですが、実は秋が2回来るのです。
実は埼玉はうどん県。うどんの生産量は、香川に次いで第2位全国7大うどんをご存知でしょうか?私も最近知ったのですが、この7大うどんの1つが埼玉の武蔵野うどん。ちなみに他の6つは下記になります。★は、3大うどんです。
秋田 稲庭うどん★
群馬 水沢うどん★
愛知 味噌煮込みうどん
三重 伊勢うどん
香川 讃岐うどん★
長崎 五島うどん
※7大うどん 3大うどんには、諸説あり
また、農林水産省「米麦加工食品生産動向」によるとうどんの生産量は、香川県に次いで埼玉県は第2位。
このようなことから、かなりうどんの食文化が発達しているという事がわかります。
小麦生産の多い熊谷でも昔からうどんが食べられ、昔は嫁入り道具に、手打ちうどんの道具が入っていたという話を聞いたことがあります。
以前農家の方に「どうしてうどんをたくさん食べるのか?」聞いたところ、二毛作で米麦をつくり、米はお金にかえて、麦をよく食べたからうどん文化が発達したという話でした。
今回の調査の昼食でうどんを食べましたので紹介いたします。
今回訪れたのは、熊谷市千代地区で人気の「手ぶちめんこ千代屋(せんだいや)」さんです。
この地域では、手打ちうどんの事を「手ぶちめんこ」とよびます。少しかわいい呼び方ですよね。
このキンピラ、ざっくりと太めに切られていて、甘辛の味つけでうどんにとても合います。
うどんの方は、コシがあるというよりも少し固めでアルデンテのような硬さ。少し芯の残る麺は小麦感を感じることができます。またこれが美味しい。
汁は、温かい肉汁やキノコ汁、ナス汁と冷や汁がありますが、今回はうどんの食感をより感じられる冷や汁を選択。冷や汁の付け合わせは、ネギと生姜と油揚げ。それを汁に混ぜて、ツヤツヤのうどんを汁につけてひとすすり。
歯をはじくような弾力のある麺と生姜の効いた汁がとても絡み合い、とても美味。「大盛は少し多いかな?」と思いましたが、ぺろりと完食してしまいました。
【店舗情報】
手ぶちめんこ 千代屋
住所 :〒360-0107 埼玉県熊谷市千代187−1
電話番号: 048-536-3949
営業時間:10:30~15:30
定休日 :日曜日
熊谷市には、大河である利根川と荒川が流れており、良質の伏流水に恵まれ、日本有数の快晴率で暑い夏は作物に豊かな恵みを与えてくれます。そして寒い冬は芳醇ですっきりとした日本酒を育んでくれます。
酒米は、熊谷市内で多く生産されている「さけ武蔵」。この酒米は埼玉県の研究機関で独自に開発されたものです。
そんな気候風土の中、江戸時代末期の嘉永3年(1850年)より170年以上熊谷で酒づくりをしているのが権田酒造。
昔ながらの手づくりで、昔ながらの手づくりで、仕込んだ全量を槽掛けしぼりで、丁寧に日本酒づくりを行っています。
【店舗情報】
権田酒造株式会社
住所 :〒360-0107 埼玉県熊谷市三ヶ尻1491番地
電話番号: 048-532-3611
営業時間:10:30~15:30
定休日 :基本的に日曜日祝日、年始
料金 :見学コース500円から入門コースからおもてなしコースまでご相談。要予約
日本酒直売スペースあり
今見てきたような農山漁村地域の案内や農林漁業体験を指導してくれる方をグリーン・ツーリズムインストラクターと呼んでいます。インストラクターとは、「工業技術、スポーツなどの分野において様々な指導を行う立場のもの」(ウィキペディアより)農林漁業農林漁業体験活動においては、一部の特定の体験活動、例えばスポーツ活動等を除くと、国家資格や都道府県の認定等が必要となるものではありません。
しかしながら、体験希望者への指導に際して、そば打ちや豆腐づくりのように一定の経験やスキルを持ったインストラクターが必要となる場合もあります。そんな場合は、その道の達人、知識や技能を保持している地元の高齢者を「〇〇名人」などと呼んでインストラクターとなってもらう事例も多く見られます。
グリーン・ツーリズムを推進するためには、農山漁村を訪れる都市住民に対して、地域案内や体験指導等を通じて地域の魅力を伝え、地域に対する関心・愛着を持ってもらうことが重要です。そのためには地域の広告塔としての役割を担う人材が必要不可欠となります。
そこで、まちむら交流きこうでは、平成10年からこのような人材、グリーン・ツーリズムインストラクターを育成する研修会を実施しており、令和4年4月現在延べ全国4,196名の方々に受講いただいています。
グリーン・ツーリズムインストラクターの特長を一言で表せば、地元を愛し、地元を知り尽くし、地元のすばらしい地域資源(ひと・もの・こころ)をあますことなく紹介でき、地元の地域資源を活用した体験を提供できる人のことです。さらには、体験活動中の安全対策や緊急時の対応にも精通しているため、安心して体験に参加できるということもグリーン・ツーリズムインストラクターの大きな特長と言えます。
さあ、みなさんもグリーン・ツーリズムインストラクターを目指しませんか?
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