農家民宿

深い渓谷のその奥に息づく平家落人の里「栗山郷」

田舎、自然が豊富、郷土料理、料理がおいしい

ダムからダムへと鬼怒川の源流に分け入る

 東武鬼怒川線の鬼怒川温泉駅で下車、女夫渕(めおとぶち)温泉行きの市営バスに乗り込み約1時間のバスの旅を楽しみます。バスは線路と平行する国道121号を川治湯元駅の少し先、五十里(いかり)ダムまで走るとルートを変え、トンネルをくぐり川治ダムへと進みます。車窓からダム湖(八汐湖)を見下ろしながら再びトンネルを抜けました。ここから先が栗山郷(旧栗山村)。バスはさらに鬼怒川源流渓谷の奥深く川俣ダムの終点女夫渕温泉を目指し沢沿いの険しい山道を上っていきます。

ダム湖(八汐湖)

栗山郷の絶景スポットを巡る

 関東最後の秘境と言われる栗山郷。野門(のかど)橋からさらにその先にある瀬戸合峡(せとあいきょう)。梅雨空で霧がかかり景色はまるで水墨画そのもの、切り立った深く険しい谷の遙か遠くに架かる橋が印象的です。岩にへばりつくような道を進んだその奥には川俣ダムが姿を現します。ダムへと続く遊歩道を下り、入口となっている資料館を見学、出口の階段を降りると目の前に瀬戸合峡の深い谷間をせき止めて造られた縦長でアーチ型の川俣ダム、そして水をたたえた川俣湖の全景が望めます。さらにダムから奥の川俣温泉の入口にある間欠泉へ、温泉の入口に架かる橋の下の岩壁からは水蒸気がゆらゆらと漂っています。橋の対岸にある足湯に場所を移して箱状の噴出口を辛抱強く注視すること1時間余り、静けさから一転突然轟音を伴い勢いよくお湯が吹き上がります。噴出の勢いがなくなるまであっという間の出来事でしたが見応えある自然現象を体験しました。(噴出の様子を映像でご覧いただけます。)

瀬戸合峡(せとあいきょう)

長でアーチ型の川俣ダム

川俣温泉間欠泉(クリックすると動画が見られます。)

家康の里 民宿 福冨士

 川俣温泉から県道を野門橋の手前まで戻ると脇道の入口に黒く大きな木の門がそびえています。門のてっぺんには葵のご紋、そして家康の里の看板。幕末、戊辰戦争の際、会津藩は日光東照宮にあった徳川家康の御神体に危害が及ぶことを心配し密かに会津若松の鶴ヶ城に運び出しました。しかし会津に向かう道中、城の陥落の知らせを受けた会津藩から御神体をこの地で一時的に預かることになった、そういう縁もあり「家康の里」の名前を掲げることになったそうです。
 門の先へと続く山道を数分車で駆け上がると目の前に集落が現れました。正に隠れ里といえるような野門の集落にある民宿 福冨士に到着です。福冨士はまちむら交流きこう登録の農林漁業体験民宿、また農林漁家民宿おかあさん100選認定者の宿でもあります。深山の雰囲気に浸り、いろり端で宿自慢の山里の恵みをいただくことのできるこぢんまりした宿です。

  • 大きな黒い門に金の葵のご紋が目印
  • 民宿 福富士
  • 大浴場「権現の湯」
  • くつろげる客室

いろり端で山里の恵みをいただく

 広間に仕切られたいろり端でいただく福冨士自慢の夕食。ほどよく熾きた炭の周りを串に刺さった野趣満点の素材の数々が囲みます。うるち米で作ったばんだい餅は甘塩っぱいたれともちもち食感で大きなみたらし団子のよう。ウズラ、イワナそして清流の珍味サンショウウオは癖がなく軽い塩味で躊躇なく丸ごといただけます。なんといってもおすすめなのがミンチ肉に味噌や山椒等秘伝の調味料を混ぜ竹べらで焼いた「一升べら」。調味料が肉の持ち味を数段にも高めます。炭火で軽く焦げ目が付いた塊を少量箸でそぎ取り竹筒の中で温まったかっぽ酒と一緒に味わうと最高の取り合わせです。鹿刺しや自家製のどぶろく、宿で収穫した山菜や花豆、締めには地粉で打った手打ちそばまで振る舞っていただき滋味豊かな栗山の郷土料理を堪能しました。

「ただいま!」が合い言葉

 農林漁家民宿おかあさん100選認定者でもある福冨士の女将小栗美智子さんは常連客から親しみを込めて“みっちゃん”と呼ばれています。福冨士の先代でもあった美智子さんの義父さんはかつて多くの人を使い林業で生計を立てていました。しかし斜陽化の波が押し寄せ、山の仕事も減ってきたため当時ブームだった民宿を開業します。やがて宿の経営が軌道に乗った頃美智子さんが郡山から嫁いできました。ダムやトンネル工事が全盛の時代は集落の多くが民宿業を営み工事関係者の寝食を支えたそうです。
 栃木、福島訛りでしゃべる“みっちゃん”の飾らないあったかいキャラクターは宿泊客との垣根をあっという間に取り払います。リピーターは「ただいま!」が合い言葉、喫茶ルームの壁一面にびっしりと貼られた宿泊客の写真の数がそれを物語っています。これも福冨士の大切な財産。 
 現在、集落の民宿は3軒となり、就業の場も少なく若者も戻りづらい環境の中、栗山郷の活性化のために頑張っている美智子さん。広い旧栗山村内の違う地域と連携していきたい。例えばワラビ採り体験ができる地域と連携して宿泊と体験を併せたプランを提供してみたい。そのためにも地域に若い人達がもっと定住してもらえるような環境づくりを考えていかなければ。ふるさと栗山を思いやる美智子さんの気持ちが伝わってきました。

小栗美智子さん

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