今回の旅の舞台は、神話と世界農業遺産の地、宮崎県の高千穂町、椎葉村等を中心としたエリアです。見どころ満載の日本の農山村の魅力あふれるツアーとなりました。
まずツアー名である、神話と世界農業遺産について説明をします。
古代の日本で、乱れた地上界を治めるために、天界から遣わされたのがアマテラスの孫のニニギノミコトでした。そして地上に降臨しました。それがいわゆる「天孫降臨」です。その降臨場所が高千穂と言われております。初代天皇の神武天皇は、ニニギノミコトの子孫といわれております。
また、「天孫降臨」以外に高千穂には、数多くの神話が今でも語り継がれています。
世界農業遺産は社会や環境に適応しながら何世代にもわたり作られてきた農業上の土地利用、伝統的農業とそれに関わり、育まれた文化やランドスケープ(農林水産業が営まれている地域的なまとまり)、生物多様性などが一体となった世界的に重要な農業システムを国連食糧農業機関(FAO)が認定する仕組みです。世界では、15ヵ国36地域が認定されており、日本では8か所が認定されています。宮崎県高千穂郷・椎葉山地域は2015年に認定されました。ユネスコ世界遺産は有形の自然・文化遺産を保護保存することを目的にしているのに対して、世界農業遺産は、無形の農業システムの保全を目的としております。
この地域では、森林に囲まれ平地が少ない地域で、針葉樹による木材生産、広葉樹を活用したシイタケ生産、和牛の生産、お茶の生産、棚田での稲作等を組み合わせて生計を立てていました。標高の高い傾斜地で農業用水を確保するために建設された山複水路は500㎞にもおよび、用水供給のほか、斜面を流れ落ちる雨水を排水することで、集落を災害から守る役割を果たしています。
また、地域に伝わる「神楽」は五穀豊穣を願う舞踏です。現在もほとんどの集落で神楽が奉納され、厳しい山間地で暮らす人々の安定を願う祈念の場として受け継がれています。
また、神楽を舞うグループが、地域の生活や文化の維持を行う上で、地域をまとめる中心的な役割を担っているのもこの地域の特徴です。
宮崎空港から最初の目的地である、日之影町にバスで向かう途中、車窓から風景をみると、平野はほとんどの田んぼで、田植えが終わっていました。ちなみにこの日は、4月19日。宮崎の平野部では、3月~4月、山間部では5月~6月に田植えをするのが一般的とのことでした。
石垣の村「戸川」は、現在世帯数7軒のとても静かな村です。自然石を積み重ねて棚田、石垣、宅地、石倉、防風垣等の村の様々な建造物が石でできています。
最古の石垣は約160年前に作られたと言われています。平成11年には「日本棚田百選」に認定。翌年には「八回美しい村コンテスト」全国農協中央会賞を受賞しています。
この石垣の村「戸川」に足を踏み入れると、まるで、どこかテーマパークにでも行っているような、非日常的な風景が広がります。今回ガイドをしてくださったのは、この地域にすむ戸高さん。戸高さんの案内で石垣の村をめぐりました。
戸川の石工の職人が江戸城修復で学んだ石垣技術を持ち帰り、この地域の石垣技術が高まりました。またこの地域には、石が多かったこともあり、石垣で村全体がおおわれているような景観になっています。
まるで、古代遺跡のような棚田。人気アニメ映画の空に浮かぶ城の様です。棚田はこの村には100以上あり、田植えは6月ごろで、今はレンゲを植えて見学者を楽しませているとのことです。
6件2尺(約11m)の石垣は、日本一の高さを誇っています。この場所は、大変落石が多く、この崖の下の地主の家を守るため石垣を築き、平らのなった場所は、耕作地として利用するようになりました。
とにかく石垣の村「戸川」がすごいのは、この村が今もなお、地域に人が住み、農林畜業を営む生活があるという事です。つまり、現役で機能している村という事です。
そのような農業を中心としたシステムも含めて、世界農業遺産に選定されています。
高千穂町にある、山の学校レストラン菜膳は、廃校になった向山北小学校の倉庫を改装して、平成25年にオープンしました。完全予約制で「高千穂の山の恵みを味わえる店」をコンセプトに運営しています。私たちが訪れた日のメニューです。
①ニジマスのソテー、ワラビのソテー
②季節のてんぷら
(セイタカアワダチソウ、ワラビ、アザミ、ヨモギ、タンポポ、タラノメ)
③筍の煮物
④あくまきの揚げ出し
※この地域の郷土食でもち米を灰汁で炊いてついた餅にあられをまぶし餡をかけたもの
⑤椎茸南蛮
⑥手作り蒟蒻、うるい、椎茸
⑦クレソンの和え物
高千穂でとれる山菜や野菜にこだわった料理は、どれも最高で、心と体がきれいになっていくようでした。
特に今回感動したのは、季節のてんぷらです。まるで花を生けるようにきれいに盛り付けられたてんぷらは、舌だけでなく目も楽しまさせてもらえる料理でした。
高千穂峡は、約12万年から9万年前に阿蘇カルデラの火山活動によって高温の火砕流が五ケ瀬川の渓谷沿いに流れ固まった後、長い年月をかけて川の浸食によりV時渓谷になったと言われております。
高千穂峡の川幅が一番狭まった部分にあるのが真名井の滝です。
神話によればアメノムラクモノミコトが天孫降臨した時に、水のなかったこの地に水種を移しました。これが天真名井として湧き出て、滝となって流れていると言われています。
私たちが訪れた日は、外国人のお客様も多くたくさんの人が高千穂峡にはおりました。遊歩道を少し進むと真名井の滝が良く見える展望スペースにつきました。
とても神聖で何か力をもらえるような気がしました。
このような場所なら神様が降臨しても不思議ではないと感じさせられる、とても独特の雰囲気のある場所でした。
がまだぜ市場は、レストラン、観光案内所、直売所の3つの機能があり、その直売所が鬼八の蔵です。組合員は160名から170名で、畑から直送の安心高冷地野菜や地元の加工品等を提供しています。
店内に入ってとにかく圧巻なのが、野菜ごとのレシピ集の多さです。
野菜の棚の上に封筒が吊るされ、そこにレシピが入っていて、お客様はそれを自由にとれる仕組みです。
スタッフの方におすすめのレシピを聞いたところ、クレソンのレシピをお勧めしてくれました。理由を聞くとクレソンは、香草で脇役になっている野菜ですが、クレソンが主役のこのレシピは、野菜の本来の味を引き出して、とてもおいしいとのこと。さっそく家に帰って作ってみようと思いました。
お店の印象としては、レシピやPOPが店内に多く、とにかくスタッフがこの地域の食材や加工品の良さ、生産者の想いを伝えようという想いを強く感じました。