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日本で唯一の食文化創造都市 鶴岡 ~独自の食文化と、それを守る人々~ 

特産品、自然が豊富、郷土料理、海沿い

庄内平野には緑の風が吹く

 庄内空港へと近づいて飛行機の窓から眼下に広がるのは一面の緑。鶴岡市に降り立つと、見渡す限りにまっすぐ並んだ大きな田んぼがどこまでも広がっていました。

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 鶴岡市は、山形県西部、日本海沿岸部に位置する、人口約13万人の都市です。北に鳥海山、東に出羽三山、南を朝日連邦の山々に囲まれ、日本海に面した西側には庄内砂丘が広がります。市の北部は広大な庄内平野となっており、日本有数の穀倉地帯でもあります。

 庄内平野の中にあり、遮るものがないために強い風が吹くのもこの地域の特徴。スケールの大きな田園風景と合わせて、「庄内平野には、緑の風が吹く」といわれるのだとか。

 ちなみにこの強い風は、ここで育つ作物を「美味しくする」ともいわれています。風が吹くことによって作物の中に風が通り抜け、湿度が下がることで病気になりにくい、という説や、強い風が吹くことで、作物が倒れないようにしっかりと根をはる、という説もあるそうです。

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 豊かな自然環境と、四季の変化がはっきりした気候の中で、海の幸も、里の幸も、山の幸も揃い、食材も豊富な鶴岡市。こうした豊富な食材と、出羽三山の精進料理(後述)に代表されるような多様な食文化が認められ、2014年には、ユネスコ創造都市ネットワーク食文化部門への加盟が認定されました。食文化部門への加盟が認められたのは、日本では初めてのこと、現在も日本で唯一のユネスコ食文化創造都市です。

陸の孤島で育まれた独自の食文化 

 前述の通り、四方を山や海に囲まれ、良い意味で陸の孤島のような存在だった鶴岡では、他の文化が入りにくく、独自の文化が古くより連綿とつながってきたという経緯があります。

 その1つとして挙げられるのが、在来野菜。昔から農家が大切にしてきた50種類以上もの在来野菜が今なお継承され、大切に育てられています。

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 中でも市外・県外の人からも人気の高い「だだちゃ豆」は、鶴岡を代表する特産品。さやに生える茶色いうぶ毛と、独特の香り、深い甘みが特徴です。鶴岡の気候風土にマッチしたこの種を、ほかの地域に持っていって育てても、その品種特性は消えてしまい、同じ味にはならないのだそうです。

 このだだちゃ豆、地元の人は、さやごと味噌汁に入れる食べ方をするのだとか。味噌汁の具として食べるというよりも、出汁として使い、そのうま味がのった風味豊かな汁を味わうそうです。鶴岡ならではの贅沢な食べ方ですね。

 また、米どころということもあり、もち文化も発展しています。笹巻きやとち餅、しそ巻きなどの米を使った加工品は年中店頭に並び、市民の食卓を飾ります。

 ちなみに、笹巻きとは、もち米を笹の葉で包んで煮た食べ物で、ちまきとも呼ばれますが、鶴岡の笹巻は、他地域のそれとはすこし異なります。笹で包んだもち米を、お湯ではなく、灰汁の上澄みを使って煮込む(もしくはつけこんでから煮る)ことで、もち米が黄色くなり、ゼリー状のプルンとした触感の笹巻きが出来上がるのです。端午の節句のお供えものとして、昔から各家庭で作られてきた伝統食で、現在でも鶴岡の春の風物詩となっています。

刀を鍬に変えて開墾に力を注いだ庄内藩士

 歴史的な面からいえば、江戸時代、庄内藩酒井氏14万石の城下町として発展した地域でもあります。戊辰戦争に敗れた庄内藩でしたが、西郷隆盛の取り計らいにより寛大な処置を受け、これを機に、後に親交を深めたといわれています。このことから、現在も鶴岡市と鹿児島市は兄弟都市として交流があるのだとか。江戸時代からの歴史が現代にまで深く影響しているのですね。

 なお、戊辰戦争後、明治維新により職をなくすことになった旧庄内藩士たちは、刀を鍬に変え、月山山麓の広大な土地を開墾したことでも知られています。開墾した土地の多くは桑園となり、製紙工場や絹織工場も作られ、町の発展を助けました。市内にある松ヶ丘開墾場は、今ではこうした歴史を伝えるための記念館となっており、国の史跡にも指定されています。

独自の文化と歴史が息づく町 鶴岡

 市内には農家レストランや農家民宿、また地産地消に力を入れる料理人など、人材面でも豊富に揃い、地域の魅力をより一層高めています。

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 長南光さんが営む「知憩軒」は、この地域を代表する農家民宿の1つ。20年前からこの地で営業を続ける、農家民宿の草分け的存在です。出されるお料理は、どれも素材そのものの美味しさを味わえる、体が喜ぶ味でした。食材はもちろん、それが載った器や、飾られた置物なども、地域の作家が作ったものが使われており、しみじみと豊かな心持になれる場所です。

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 また、修験道で知られ、霊山として名高い出羽三山。出羽三山とは、羽黒山、月山、湯殿山の総称で、山岳信仰の場として古くから信仰されてきました。現在でも多くの参拝者が訪れる地です。そんな出羽三山神社の斎館では、かつて山伏が食べていたという、この地に伝わる精進料理を味わうこともできます。出羽三山の山麓でとれた食材を使って作られた伝統の味を、斎館の静寂の中でいただくことで、かつでここで修行していた山伏たちの暮らしが想起されます。

 この他、築130年の自宅を改装した農家民宿「母家」や、田んぼの真ん中で本格ナポリピッツァを味わえる「穂波街道 緑のイスキア」、さまざまなフルーツとそれを使った加工品が人気の「産直あぐり」、種類豊富な野菜が主役の直売所「しゃきっと」など、鶴岡の食や文化に出会える場所がたくさんあります。

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独自の文化と歴史が息づく町、鶴岡。初夏には風に揺れる田の海が美しく、秋になれば稲穂が黄金色に輝きます。

 鶴岡で出会った人々からは、この地が培ってきた歴史や文化をそれぞれに愛し、大切に受け継ごうとしているのが伝わってきました。

 美しい景色と、そこに息づく文化、そして、それを守る人々に会いに、鶴岡へ出かけてみませんか。

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