日帰り温泉施設は全国に多々あれど、廃校を利用した施設は珍しいのではないでしょうか。
ここ阿曽温泉は、平成15年(2003年)に廃校となった阿曽小学校再利用した温泉施設です。
昭和30年に竣工して以来、48年間の間この地域の子供たちを見守ってきた阿曽小学校。しかし、子供の数の減少により廃校になることに。多くの思い出が詰まった小学校をなくしてしまうのは惜しいという住民の願いが叶い、温泉施設として再オープンしました。できる限り当時のまま残したいと、廊下や手洗い場など、小学校のときのまま。
この日、受付にいた女性もここの小学校の出身。ちょうどその教室で私も学んでいたんですよ、と懐かしそうに話してくれました。
再び人々の集う場となった旧小学校。今では地域の人々のコミュニティの場として活用されており、廊下は地域の人々が育てた自慢の盆栽の披露の場になっていたり。
図書室には自由に読める本や、小学校の歴史が展示されています。
ひとっ風呂浴びてお腹が空いた頃ではありませんか?それならぜひ併設の食堂「あすなろ」へどうぞ。
一歩足を踏み入れると思わず、わあ、懐かしい!と声をあげてしまいそうになります。黒板やオルガンなど、昔の教室がそのまま残されているのです。
おすすめは「伊勢うどんセット」。もちもちとした極太麺を、たまり醤油につけて食べる独特の伊勢うどんは、その昔、伊勢の参拝客にほっとする食べ物をということで振る舞われたのが始まりとか。伊勢近辺に訪れたらぜひ味わいたい料理のひとつです。
味ごはんは、きのこやにんじん、ごぼうなどをダシで炊いたもの。お母さんたちの家で食べられるごく普通の食事ということですが、素朴でしみじみとした美味しさがあります。このセットで600円と、とてもリーズナブル。その他、夏場は冷やし中華やかき氷など季節メニューも登場します。
教室には、学び舎らしくいろいろな格言や戒めが貼られているのですが、「大飲過食(さけのいくいすぎ)の戒め」というものが目に入ります。人は各に応じて天より飲食を与えられるので、感謝して食べること、そして、その食べ物には限りがあるので、食べ過ぎると天は必ず取り立ててにくる、腹八分目を心がけよ、という内容。ハイ、お母さんたちが心を込めて作ったお料理、心から感謝していただきます。
敷地内には、地元の野菜を販売する「四季の店 旬彩」もあります。
地元の人々が育てた新鮮な野菜がずらり。多くは有機・無農薬にこだわっているので、安心・安全で、ほとんどが露地物です。そのため、旬の季節には同じ食材が集中してしまうことも。そこでスタッフが工夫しているのがレシピカード。漬け物にする方法や、美味しく食べるためのレシピを紹介し、消費してもらうよう努力しているということです。
目を引いたのは、真珠米というお米。清流宮川の上流に位置するため、その清冽な水を活かした米作が盛んだそう。牛糞堆肥をベースにしたオーガニック農法で作られたお米は、その艶やかな炊きあがりから真珠米と名付けられ、美味しい米の基準である食味ランキングでも高評価を獲得しているそうです。
また密かな人気が、町内唯一の天然酵母パンの店「山小屋」さんのパン。フランスパンやカンパーニュなど本格的なパンを作っており、最初はお年寄りたちに「なんだか硬いパン」と言われていたのですが、次第に粉の風味を活かしたパンのおいしさがおじいちゃんたちの心をつかんでいったそう。今では入荷するとすぐに売りきれてしまう人気商品となりました。
一時は廃校になり人の気配が消えていた場所に再び戻った活気。近隣の方がここに集い世間話をして帰って行きます。住民達の小学校を残したいという思いが見事に実現した施設。もちろん一般の方もウェルカムなので、ぜひ立ち寄ってみてはいかがでしょうか?子供時代のことを懐かしく思い出すかもしれませんよ。
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