廃校活用

山奥の廃校で「絶品うどん作り」を体験しよう!「お山の学校 ながた」

農村体験、家族で楽しむ、自然が豊富、山間

 内子町の中心部から車で約15分。「本当にこの先に集落があるのだろうか」と疑ってしまうような細い山道を上っていくと、途中で景色が開けてきました。ここ内子町長田地区に、廃校となった小学校の木造校舎を利用した体験宿泊施設「お山の学校 ながた」はあります。

 平成24年にオープンした「お山の学校 ながた」は、農業体験のほか、手打ちうどん、こんにゃく、豆腐など、長田地区の郷土料理づくりを体験できる宿泊施設です。簡易宿泊も受け入れており、内子町長田産の旬の食材を使った田舎料理の提供もしてくれます。

絶品! ふわふわもちもちの手打ちうどん

この日はうどん作りを体験。早速、打ち方を教わります。教えてくれるのは、この施設の代表であるうどん打ち名人の太田利栄さんと管理人の大森一繁さん。寝かしておいてくれた生地を袋に入れ、足で踏むところから体験します。

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 均等に力が入るよう、足で踏みながら生地をのばしていきます。これによってうどんのコシが決まるのだそうなので、重要な作業。何度も踏みこみます。

 次に、生地を延ばしていきます。台に打ち粉を敷き、生地を置き、棒で延ばしていくのですが、これが予想以上の重労働。踏み込み、コシも強くなったうどんの生地は、想像以上にしっかりとしていて、力をかなり入れなければ思うようには延びてくれません。しかも丸く延ばすのにもコツが必要。生地を回し、延ばす、を繰り返し、太田さんの助けも借りながら何とか丸く生地を延ばすことができました。

 いよいようどんを打ちます。生地をたたみ、均等に包丁で切っていきます。うどんは茹でると太くなるので3㎜程度の細さを保たなければならないのですが、慣れないとなかなか難しい作業……。太さはまばらですが、何とか全て切り終えました。

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 早速、うどんを茹でてもらい、打ち立て、茹でたてのうどんを頂きます。自分で打ったうどん、ひときわ愛着も強いもの。

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 つるんとしたのど越しと、もちもちとしたコシ、噛むと小麦の甘みが口に広がり、打ち立てだからこそのおいしさです。

 そして何より感動したのが、つゆ。これが絶品!

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 つゆを作ってくれた大森さんの奥さんに作り方を聞いてみると、内子町のつゆは、大豆と干しシイタケから出汁を取るのだと教えてくれました。

 作り方は以下の通り。大豆を戻したシイタケと一緒に柔らかくなるまで煮ます。大豆を入れることで、自然な甘みが出るとのこと。そこへ、しょうゆ、みりんで味をととのえれば完成です。出汁を取った後の大豆とシイタケも、そのままつゆの中に入れ、具として食べます。そこに、ゆずの皮を削ってさわやかな香りを加えます。シイタケの旨み、大豆の甘みや食感がアクセントとなり、うどんの新たなおいしさを発見しました。

 そのおいしさに感動しながら、ついつい箸を伸ばしていると、つゆの作り方を教えてくれた太田さんの奥さんが、「私も40年前に長田にお嫁に来てから、お姑さんに作り方を教わったんです。土地で採れたものを使って作る、この地域じゃ当たり前の食べ方なんですよ」と笑いながら教えてくれました。

小学校の面影そのままに、地域の食文化を発信

 「うどん作りは、この地域では昔から各家庭で行われてきました。豆腐もこんにゃくも、自分達で栽培した豆や芋で手造りするのが普通でした。昔は木の芽(山椒)味噌を付けて、田楽にしたりして食べましたね。作り方は親から教えてもらいました」と大森さん。

 「お山の学校ながた」では、大豆を石臼で挽くところから豆腐づくりを体験できます。手造り豆腐は濃厚な大豆の旨みと出来たてだからこそのおいしさを楽しめるとのこと。こんにゃくも、手造りならではのぷるぷるとした食感で、一度食べたら忘れられないおいしさだといいます。昔ながらの暮らしだけでなく、もっと長田を楽しんでもらおうと、石窯で焼くピザづくりも体験できます。

 また、かつての教室は宿泊部屋として使用できます。黒板やロッカーなど、小学校だった頃の名残がそのまま残り、懐かしい思いにもさせてくれます。

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子供達の声が再び響く

 長田小学校が児童数の減少により廃校となったのは、平成16年。それからは地域の自治会館(公民館)として利用されてきましたが、平成24年、「この地域の食文化を発信する拠点を作りたい」という地域の有志達によって、校舎を一部改修し、「お山の学校 ながた」をオープンさせました。

 その有志の一員である太田さんと大森さん。「このままではこの地域が寂れてしまう。『このままでいいのか?』と思い、この施設の運営を始めたんです」と、その時の思いを語ります。

 かつて、タバコの栽培で賑わっていた長田地区。昭和30~40年代には、多い時で120人位の生徒が長田小学校に通ったといいます。しかし人口が徐々に減り、長田小学校が閉校してからは特に、この地区に子ども達の声が響くことはほとんどなくなりました。太田さん達も「寂しかったですね」と当時のことを振り返ります。

 しかし、この「お山の学校 ながた」ができてからは、再び子ども達の声が響くようになったそうです。松山市内の幼稚園や小学校などが、林間学校の一環で訪ねてくることも多く、川遊びなどの昔ながらの遊びも指導。泊りがけで訪れる子ども達には、古い釜を再利用して作ったという「五右衛門風呂」に入ってもらうそうで、その珍しさから大盛り上がりするのだとか。大学生や自転車やバイクで旅をする若者が訪れることも。要望があれば、竈でご飯を炊いたり、囲炉裏で魚を焼いたりもできるそうです。

 かつての農村の暮らしが体験できる「お山の学校ながた」。かつての小学校の校舎には、再び、賑やかな声が聞こえ始めていました。

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