農業体験

新緑の南魚沼・八海山で春を感じる旅(後編)~山菜教室に参加して~

農村体験、家族で楽しむ、自然が豊富、山間、料理がおいしい、夫婦で楽しむ

前夜21時前には深い眠りについていたこともあり、夜中の3時頃にトイレに起きた時、窓の外から何やら物音が。よく耳を澄ましてみれば、ザァーという水の流れるような音が聞こえてきます。週間予報のとおり、やっぱり雨が降り出したかと憂鬱な気持ちで再び布団に潜り込みましたが、朝目覚めるとサプライズが。日頃の行いのたまものか、はたまた、思いが天に通じたか、前日と同じく快晴の空が広がっていました。水の流れるような音の正体は、宿の裏手を流れる用水路。雪解けのこの時期は水量が多いため、雨の音と勘違いしたようです。最大の心配事だった天気にも恵まれ、この旅一番の目的である山菜教室の当日を迎えました。

ボリューム満点の朝食!炊きたてのコシヒカリは何杯でもおかわりしたくなる美味しさ

朝食はご覧のとおりボリューム満点。メインは、ハムエッグとサバの照り焼きの2つ。サバの隣に載っているのは、昨夜もいただいた蕗味噌です。独特の苦みがくせになる味わいです。3つの小鉢は、青菜のおひたし、うどのきんぴら、わらびのからしじょうゆ。ここにも今が旬の山菜がふんだんに使われていました。そしてごはんはもちろん南魚沼産のコシヒカリ。炊きたてのごはんはふっくらモチモチ。ほのかな甘みが感じられ、朝からガッツリいただきました。

食後は、女将の上村孝美さんに民宿のお話しを伺い、玄関前で記念撮影。昭和58年の開業から30年以上経っているとのことですが、年齢を全く感じさせない元気あふれるお母さんでした。大変お世話になりました。

なりわいの匠による体験指導

桑原さんに旅館まで迎えに来ていただき、いざ出発。車で3~4分ほどで山菜採りの現場である八海山スキー場に到着しました。駐車場に車を停め、まずはオリエンテーション。インストラクターの自己紹介と注意事項等の説明を受けます。それまで事務局だとばかり思っていた桑原さんがここからインストラクターに早変わり。なんと桑原さん、地域で培われた技能を活かした体験交流の指導者として新潟県知事が認定する「なりわいの匠」に認定されるほどの山菜採りの名人だったんです。今回はもう一人、同じく「なりわいの匠」である勝又ひろこさんにも同行いただきました。

一方、この日の参加者は総勢8名でしたが、私以外の7名は全員がファミリー。おじいちゃんとおばあちゃん、長女夫婦と子ども2人(小5・小3)、そして次女という3世代。傍目にもとても仲の良いご家族です。ご実家は神奈川県茅ヶ崎市だそうですが、昨日はさいたま市の長女の家に泊まって、今朝5時過ぎに出発してやって来たとのこと。今回の体験を本当に楽しみにしていたという気持ちと並々ならぬ期待がひしひしと伝わってきました。

残雪を踏みしめプチ冒険 急斜面にこごみの群生地を発見

多くのスキー場を抱える豪雪地だけあり、あたりにはまだまだ多くの雪が残っていました。残雪を踏みしめ歩くこと数分。途中には雪解け水が豊富に流れる沢もあり、ちょっとした冒険気分が味わえます。最後の難所、小川をわたった先の斜面が今回の目的地。急な斜面一面にこごみが群生していました。足元に気をつけながら、一歩一歩斜面を登っていきます。

こごみについての豆知識

正式名称クサソテツ。多年生のシダの一種であるこごみは、春から初夏にかけて渦巻状の新芽が出てきますが、食用にするのはこの新芽の部分。わらびやゼンマイなどと違ってアクがないため調理に手間がかからず、またクセのない淡泊な味であることから、おひたしや和えもの、炒めもの、天ぷらなど幅広い料理として食されています。

先端が巻き込まれた新芽の姿が、まるで人がかがみ込んでいるように見えるからこの名がついたとも言われています。

比較的陽当たりの良い斜面などを好み、山道の道端や崖の下など、水はけがよく湿った場所に多く生えます。群生していることが多いため、初心者でも容易に収穫が期待できる山菜の一つです。

茎が太く、先端がしっかりと巻かれており、お辞儀をしているように見えるものが美味しいとのこと。あまり背の高いものは育ち過ぎで、味も少し落ちるそうです。

一つの株からは何本もの芽が出てきますが、全ての芽を摘んでしまうと枯れてしまい、翌年以降、収穫ができなくなってしまうとのこと。

今回の2名のインストラクターさんからは、山菜の採り方だけではなく、美味しいものの見分け方や保存方法、調理法、さらには、将来にわたり持続可能な体験としていくためのルールやマナーなど、多くのことを教えていただきました。おかげで少し山菜に詳しくなった気がしました。

30分でビニール袋がいっぱいになるほどの大豊作

それぞれが、お気に入りの場所で、思い思いにこごみの収穫に熱中。30分ほど経ったころには、ビニール袋がいっぱいになるほどの大豊作となりました。

帰り道で、勝又さんも交えて家族揃って記念撮影。車に戻ってそば打ち体験の会場であるレイホー八海に向かいます。ここでとってきたこごみを仕分け。ゴミなどを取り除き、乾燥を防ぐため新聞紙でくるみます。これらは全ておみやげとして自宅に持ち帰っていただくとのこと。これだけあれば1週間は持ちそうですね。

その後、そば打ち体験の準備が整うまでの間、会場周辺を散策。運良くふきのとうも見つけることができました。

新潟ならでは。布海苔の入った手打ちそば

さて、続いては、そば打ち体験です。指導してくれるのは前述の勝又さん。勝又さんは山菜採りだけでなく、そば打ちでも「なりわいの匠」の認定を受けているとのこと。そば打ち体験自体はこれまでにも何度か経験したことがあり、それほど目新しいものではありませんが、新潟らしくつなぎに布海苔を使っていることが特徴です。

布海苔とは海藻の一種で、元々は織物の仕上げの糊付けに使われることが多かったようですが、現在は魚沼地方発祥の「へぎそば」のつなぎとしても使われています。布海苔を使うことで独特の喉ごしと、食感を出すことができるそうです。

くだんのKさんファミリーにとっては、そば打ちも生まれて初めての経験。特に、手の小さい2人の子どもさんにとっては、捏ねる行程はかなり力が必要で苦労されたと思いますが、周りの家族の応援を力に、終始笑顔で一生懸命頑張っていたのが印象に残りました。

笹団子づくり体験もできます

お隣のテーブルには、笹団子づくり体験に来られた親子の姿が。お話しを伺うと、やはりさいたま市から来られたとのこと。世の中はゴールデンウィークなんだということを改めて実感した瞬間でした。大好物の笹団子をお母さまに食べてもらいたいという、とっても親孝行な娘さんです。すげの結び方が難しいようで、見た目はやや不揃いですが、蒸し器で蒸した熱々の笹団子は、きっとこれまで食べたどんな笹団子にも負けない美味しさだったのではないでしょうか。

山菜のてんぷらと一緒に手打ちそばを堪能

最後に包丁でそばを切ったら体験終了。すぐにラップをかけて、食事場所であるペンションカムさんに運びます。ペンションカムさんは青い壁と三角屋根が目印の洋風のオシャレなお宿。ここでそばを茹でてもらいます。こごみ、ふきのとう、うどなどの山菜のてんぷらとうどのきんぴら付き。さてさて、自分で打ったそばの味はいかがですか?

直接感想をお聞きした訳ではありませんが、漏れ聞こえて来た声からは、残念ながら名人が作ったものとは、明らかな違いがあったようです。我々素人が作った場合、どうしても最後の切る段階でバラツキが出てしまうため、茹でる時に均一に火が通らないことから、食感に微妙な影響を与えるのでしょうね。とはいえ、やはり自分たちで作ったそばの味は格別。8名で12人前というかなり多めの分量だったにも関わらず、ほぼ残すことなく完食でした。

閉校式では、全課程を修了した証として、すてきな修了証までいただきました。

楽しさいっぱい、充実のカリキュラム

今回の山菜教室では、こごみとふきのとうを収穫しましたが、南魚沼にはこれら以外にも多くの種類の山菜が生育しており、種類によって採れる時期が異なります。また、気象状況によっても芽吹きの時期が変わってきます。今年は、今週いっぱいで終了予定ですが、来年もこの時期には必ず実施されるはず。木の芽にゼンマイ、わらびにたらの芽。何が採れるかはその時のお楽しみ。そば打ち体験とセットで昼食付き。さらに採った山菜は全ておみやげとして持ち帰ることができるなど、盛りだくさんでとってもお得なプログラムです。

南魚沼市農業体験大学校では、これ以外にも、田植えや稲刈り、ほたる観察、雪国体験などの多くのプログラムを取り揃えており、年間を通じて、自然とふれあい五感で感じるホンモノ体験をすることができます。興味のある方は、是非一度参加されてみてはいかが?

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